保護・脱保護を必要としない分子変換法は、アトムエコノミー、ステップエコノミーの高い環境にやさしく効率の高い合成法が構築できる。このような保護基フリーの合成反応の開発は有機合成上最も重要な課題の一つである。これまで保護基フリーの合成反応のための方法として、有機リチウム化合物や有機マグネシウム化合物のかわりに有機亜鉛化合物や有機ホウ素化合物といったより反応性の低い有機金属種を利用するなど、反応剤の活性を下げて、反応速度を落として官能基選択性を高めるというアプローチが主流であった。フローマイクロリアクターシステムの特長を活かした精密反応制御に基づいて、高活性な有機金属種を鍵中間体とする一般性の高い保護基フリー合成法を開発することを目指し研究に取り組んだ。様々な有機金属種の中で、最も反応制御が困難とされる活性の高い有機リチウム種の反応を中心に、シアノ基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、などの官能基を有する不安定なアリールリチウム種の発生ならびに反応の検討をフローマイクロリアクターシステムにより行い、精密温度制御ならびに超高速混合ならびにミリ秒オーダーの滞留時間制御を可能とするマイクロデバイスを開発することで、バッチ型反応器では困難または実現不可能とされるシアノ基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、のような極めて反応性の高い官能基を有するアリールリチウム種の発生ならびに反応を達成することができた。
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