研究概要 |
不斉クロスカップリング反応を行うためには、2級炭素中心でのクロスカップリング反応の実現が必要不可欠である。これまでに見出しているNi,Pd,Cu触媒について種々検討を推進した結果、Cu触媒が2級アルキルヨージドと種々のアルキル金属試薬とのクロスカップリング反応に有効であることを見出した。これとは別に立体的に嵩高い2級および3級グリニャール試薬と1級アルキルハライドとのカップリング反応がCo触媒を用いることで効率的に進行することを見出した。これらの成果は、不斉反応を行う上で極めて重要な成果である。いずれの反応も初期的な反応機構研究の結果、アルキル基の移動にアルキルラジカルを含まない機構を支持する結果が得られていることから、金属中心上に不斉配位子を導入することで不斉制御が可能であると期待できる。さらにCu触媒を用いたクロスカップリング反応の検討の過程でブタジエンとアルキルグリニャール試薬存在下Cu触媒を処理した後にフッ化アルキルを加えることで触媒活性が変化し、ブタジエンに対してグリニャール由来の水素とフッ化アルキル由来のアルキル基が導入される反応を見出した。本反応ではブタジエンの内部炭素に対するアルキル化が起きる。 一方、Ni,Pd触媒についても速度論的手法により種々検討を行い、その反応機構に関する興味深い知見が得られた(Chem. Lett 2011)。しかしながら、Ni,Pdを用いる我々の触媒系では立体障害による反応性の低下が著しく、α位およびβ位に分岐構造を有するアルキルハライドの利用は困難であり、不斉反応への展開は望めないとの結論に至った。 これらの知見からCuおよびCo触媒を用いて不斉反応へ展開することで当初目的が達成できるものと期待できる。
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