研究概要 |
まず、α,β-不飽和カルボン酸塩化物を用いた芳香族化合物へのアシル基の導入によるエノン類の合成について検討した。はじめに、ベンゾ[h]キノリンの塩化チグロイルとの反応について検討したところ、触媒としてRuCl_2(PPh_3)_3を、塩基として炭酸カリウムを用いた場合に、良好な収率で10位がアシル化された生成物が得られた。塩化ベンゾイルを用いたアシル化の際には、脱カルボニルの進行によるフェニル化体がごく少量観測されたが、本反応では対応するアルケニル化の進行は確認されなかった。シクロヘキセンカルボン酸塩化物との反応でも、対応するアシル化体は得られたが収率はやや低下した。一方、α位に置換基のないα,β-不飽和カルボン酸塩化物を用いた場合には、ほとんど目的のアシル化体は得られなかった。 その他のアリールピリジン類を用いたアシル化についても検討した。2-フェニルピリジンを基質とした場合には、モノアシル化体とジアシル化体の混合物が得られた。また、メタ位に置換基をもつ2-フェニルピリジン誘導体を用いると、立体的により空いているオルト位におけるモノアシル化体が収率良く得られた。 また、本アシル化の反応機構に関する知見を得るために、フェニルピリジンのオルト位炭素-水素結合により五員環ルテナサイクル種を合成し、これと塩化ベンゾイルの反応を行ったところ、フェニルピリジンのオルト位ベンゾイル化生成物が高収率で得られた。これより、本触媒反応では、まずアリールピリジンとルテニウムニ価種が反応しルテナサイクルを形成した後、酸塩化物と反応することでアシル化生成物を与えると考えられる。
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