研究課題
本研究は親水性セグメント-カチオン性セグメントからなるブロックカチオマーを用い、プラスミドDNA(pDNA)の凝縮を一分子単位で誘起し、その過程を初めて実験的に捕らえるとともに、そこに速度論に基づく考察を適用することで、pDNA凝縮の量子化折り畳みの成因を明らかにすることを目的としている。平成22年度はブロックカチオマーとしてポリエチレングリコール(分子量12000)、重合度20のポリリシンからなるpoly(ethylene glycol)-b-poly(L-lysine)(PEG-PLys12-20)を合成し、二つの方法でpDNAとコンプレックス化させることで凝縮を誘起した。一つ目は一般的な混合法であるPEG-PLys溶液をpDNA溶液に一度に添加し、凝縮を瞬時に誘起させる瞬時混合で、もう一つはPEG-PLys溶液をpDNA溶液に少量ずつ添加し、凝縮を逐次的に進める滴定混合である。原子間力顕微鏡(AFM)による構造観察から、凝縮の初期段階であるpDNAに対するPEG-PLysの電荷比(N/P比)0.2において、pDNAが局所的に凝縮したと推定される構造(AFMでは局所的な高さとして認識される)が見られた。興味深いことに瞬時混合では局所的凝縮が単一pDNA上に複数箇所見られるのに対し、滴定混合では単一箇所であるものが多数観察された。これは核形成、核成長のスキームを考えると、瞬時混合は多核形成、滴定混合は単一核形成であることをAFM観察より捕らえたものと理解される。本年度の検討からpDNAの一分子凝縮過程を核形成、核成長の観点で観察することに成功した。今後N/P比を上げることで核成長過程を捕らえ、さらに熱測定と相対的に議論することにより、凝縮過程が明らかになるものと期待される。
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