研究課題
本研究は親水性セグメント-カチオン性セグメントからなるブロックカチオマーを用い、プラスミドDNA(pDNA)の凝縮を一分子単位で誘起し、その過程を初めて実験的に捕らえるとともに、そこに速度論に基づく考察を適用することで、pDNA凝縮の量子化折り畳みの成因を明らかにすることを目的としている。平成22年度はブロックカチオマーを合成し、二つの方法(瞬時混合と滴定混合)でpDNAとコンプレックス化させることで凝縮を誘起した。特に凝縮過程の初期段階であるpDNAに対するPEG-PLysの電荷比(N/P比)0,2において、原子間力顕微鏡(AFM)による構造観察から、pDNAが局所的に凝縮したと推定される構造を局所的な高さとして認識できることを見出した。これを受け、H23年度はN/P比を上げていくことで核成長過程を捕らえる事に注力した。具体的には滴定の各段階においてAFM観察を行い、核生成、核成長、凝縮の各過程の構造解析を行った。N/P比を上げていくと電荷の中和点に達する前に凝縮形態が大きく変わり、紐状からロッド状になることを見出した。同様の混合過程を等温滴定熱測定で追跡したところ、電荷の中和点に達する前である電荷比0.7-0.8程度で大きな熱収支を観測した。これらAFMによる構造解析との相関から.電荷比0.7-0.8あたりでDNA連鎖の再配列を伴う大きな構造転移をおこすことを明らかにした。これらのことから当初予見した、pDNAの凝縮過程が(i)DNAの電荷がポリマーとの会合により失われ、DNA-DNA間会合がおこる(核形成)、(i)コンプレックス化の進行によりDNA-DNA間会合がジッパー的に進む(核成長)、(iii)(ii)の会合体同士が会合し、折り畳まれる(凝縮)からなるとの作業仮説の妥当性を確認した。
2: おおむね順調に進展している
これまでにAFMによりpDNAの凝縮過程を追跡できることに成功すると共に、等温熱測定からポリマーとDNA間の会合とその後のDNA鎖の再配列による凝縮過程を区別できることを明らかにした。これらのことは当初計画した通りであり、順調に進んでいる。
今後は上記解析をさらに進め、定量的な議論が出来るようにするとともに、滴定速度(滴定毎の量、滴定間隔をパラメータとする)依存性をみることで凝縮を速度論から理解し、pDNA凝縮の動力学的解析を行う。
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