研究課題
pDNAと親水性セグメント-カチオン性セグメントからなるブロック共重合体とが静電相互作用を基に形成する高分子ミセルを遺伝子送達体として応用する取組みを進めている。この過程でpDNAは高分子ミセル内核に高度に規則化された折り畳み機構に従って収容されることを見出してきた。本研究では、pDNAはなぜ規則的な折り畳み構造をとるのかという構造形成の成因を明らかにすることを目的とした。理解の取っ掛かりとして、pDNAの折り畳みを高分子の結晶化の動力学になぞらえて理解できないかと考えたことから、pDNAとブロック共重合体との会合体形成の速度に注目した。H24年度は折り畳み構造と、混合に際する滴定速度の関係を検討した。折り畳み構造を動的光散乱測定およびTEM観察から解析し、滴定速度が遅いとき(24時間かけて両者を混合)は折り畳み数0もしくは1回のものが主として観察されるのに対し、滴定速度を速くしていくにつれロッド長が短くなり、瞬時混合においては折りたたみ数4-7からなるより短いロッド長の折り畳み構造が主として観測されることを見出した。ここで、pDNAの折り畳みが高分子の結晶化と同様に記述できるとするならば、滴定速度が速いときには折り畳み頻度の多い短いロッド構造が、滴定速度が遅いときには折り畳み頻度の少ない長いロッド構造が得られると予想される。この予想は今回見られた折り畳み数の滴定速度依存性とよく一致した。会合体形成速度と折り畳み構造との相関をさらに検証するために、塩によって会合体形成速度を調節することを行ったところ、塩濃度を高くしていくにつれ折り畳み数が少ないより長いロッド構造が見られ、先の滴定速度依存性と同様の結果となった。これらのことからpDNAの折り畳みは、高分子の結晶化の動力学と同様に速度論によって支配されると考えても良い結果を得た。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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