汎用エラストマー上に精密に合成された複雑な分子素子(生体分子や、高分子、ロタキサン等の超分子)を自在に集積できるような「アンビデント反応剤」の合成と、それを用いる「インターロック架橋法」の開発を目的に研究を推進し、得られた素子・素材の特性評価を行った。その結果、(1)新規脂肪族性安定化したニトリルオキシドの簡便な合成法を開発し、本方法論をリビングアニオン重合に適用することで(2)高分子ニトリルオキシド反応剤の合成に成功した。この反応剤を用い、無触媒・無溶媒化で不飽和結合を有する高分子と混合するだけで対応するグラフトポリマーが得られることが明らかとなった。その一方、インターロック架橋法についても検討を深耕し、(3)ケミカルリサイクルシステムに有用なサイズ相補性末端封鎖基を有する[3]ロタキサン素子を開発について重点的に検討した。その結果、従来までに知られていないシクロデキストリン型ロタキサンのサイズ相補性置換基を見いだし、そのデスリッピング挙動を精査した。その他ロタキサン連結点を有する超分子ポリマーである(4)グラフトポリロタキサンや、(5)主鎖型ポリロタキサン、(6)側鎖型ポリロタキサン、(7)ポリロタキサンネットワークの新規合成法の確立をそれぞれ達成した。また汎用ポリマーにインターロック架橋点を融合するツールとして、(8)新規[3]ロタキサン架橋剤を見いだした点も本年度の成果と言える。 さらに本研究で得られた知見を総括することで、モデル系(ナノスケール)での分子挙動とマクロスケールに現れる現象をそれぞれ比較・評価し、相関関係を精査した。
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