研究概要 |
有機合成化学において官能基変換は主たる研究テーマであり、現在もより効率的な合成戦略が求められている。高分子の末端基変換は、反応部位に対して過剰の試薬・過酷な条件が必要であり、特に難しい。当研究室では、スカンジウム触媒を用いた温和な条件下での脱水重縮合によるポリエステル合成法を確立した。この手法を採用することで熱的に不安定なモノマーの重縮合が可能になった。本研究では、ジスルフィド結合を有するジカルボン酸とジオールの重縮合を達成し、ポリエステル中のジスルフィド結合を還元することでジチオールへの官能基変換を試みた。低重合度でも高変換率が得られるのが特徴である。具体的には3,3'-ジチオジプロピオン酸と3-メチル-1,5-ペンタンジオールを1:1で仕込み、Sc(OTf)_3(0.5mol%)を加え、80℃、0.3-3mmHgで6時間バルク重合させた。得られた重合体(M_n=8.4×10^3,M_w/M_n=1.9)をクロロホルムに溶解させトリブチルホスフィンを添加し、室温で24時間反応させジチオール誘導体を得た。^1H NMRから官能基の変換率は95%と高変換率であることが分かった。ポリカプロラクトンジオール(M_n=1.6×10^3,M_w/M_n=1.8)およびポリ乳酸ジオール(M_n=2.8×10^3,M_w/M_n=1.3)も同様に実験を行い、高変換率で対応するジチオール誘導体を得ることができた(収率:51%,M_n=3.0×10^3,M_w/M_n=1.3および収率:89%,M_n=4.2×10^3,M_w/M_n=1.3)。さらに、MALDI-TOFによって末端基の変換を確認できた。得られたポリカプロラクトンジチオールをプレポリマーにポリチオウレタンの合成も行った。
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