アニオン性官能基を有する高分子担体と光学活性第四級アンモニウム塩構造を有する有機分子触媒のイオン交換反応により、有機分子触媒をイオン結合を介した高分子上への固定化を行い、有機分子触媒の簡便かつ効率的な高分子固定化法の開発を行った。スルホン酸塩やカルボン酸塩を有するモノマー、コモノマー、架橋モノマーに親水性、疎水性官能基を導入したスチレン誘導体、(メタ)アクリル酸エステル類、アクリルアミド類を用い、ラジカル溶液重合により、アニオン性官能基を有する固定化用高分子を合成した。ポリマー構造(直鎖型、架橋型)、親水性-疎水性バランス(疎水性、親水性、両親媒性)や架橋度、アニオン性官能基含有量を変えた固定化用高分子を合成し、シンコニジン四級塩、丸岡触媒、キラルイミダゾリジノン塩やチオウレア部位を有するイミニウム塩の反応を行った。反応は副反応無く、定量的に進行し、特にスルホン酸四級アンモニウム塩におけるイオン結合は酸性、塩基性、中性の幅広い範囲において安定なイオン結合を形成することを見出した。本研究より、カチオン性官能基を有する有機分子触媒がイオン結合を介して高分子上に簡便かつ定量的に固定化できることが見出された。また、アニオン性官能基を有する化合物はカチオン性官能基を有する固定化用高分子により、高分子上への固定化が可能であることを明らかとし、イオン性有機分子触媒の高分子固定化法の新たな方法の一つを確立した。
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