イオン結合型高分子固定化不斉有機分子触媒による触媒的不斉反応を行い、その触媒性能(反応性、立体選択性、再使用性)を評価した。高分子固定化シンコニジンアンモニウム塩によるグリシンSchiff塩基の不斉ベンジル化反応は円滑に進行し、低分子触媒と同等の触媒性能を有することが明らかとなった。高分子に固定化するシンコニジン四級アンモニウム塩のキヌクリジン四級塩の置換基、二重結合や水酸基の修飾、ジスルホン酸塩の構造は容易に変更することが可能であり、これらの構造が不斉反応の転化率、収率、エナンチオ過剰率に大きく影響を与えることを見出した。それらの最適な組み合わせの検討を行った結果、低分子触媒を大きく上回る反応性やエナンチオ選択性を有するイオン結合型高分子固定化不斉有機分子触媒の開発に成功した。このイオン結合型高分子固定化不斉有機分子触媒は触媒活性を損ねることなく、数回の再使用が可能であった。 イオン結合型高分子固定化MacMillan触媒によるシクロペンタジエンとケイ皮酸アルデヒドの不斉Diels-Alder反応では、親水性高分子を固定化用高分子に用いることにより、低分子触媒に匹敵する触媒性能の実現に成功した。また、新規に合成したMacMillan触媒二量体とジスルホン酸との反応は副反応なく円滑に進行し、MacMillan触媒を主鎖に含むイオン結合型キラル高分子の合成に成功した。MacMillan触媒二量体のリンカーやジスルホン酸の種類を種々検討して得られたMacMillan触媒を主鎖に含むイオン結合型キラル高分子を触媒とした不斉Diels-Alder反応では、キラル高分子触媒が対応する低分子触媒や二量体触媒よりも優れたエナンチオ選択性(endo体、>99% ee)を示すことを見出し、有機分子触媒を主鎖に含むイオン結合型キラル高分子が優れた高分子触媒として機能することを明らかにした。
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