研究概要 |
多座配位子の基礎骨核となるジエン部位とヘテロ元素含有部位を架橋し,新たな配位子を複数合成した.例えば,ノルボルナジエン骨核にアルキル鎖を導入し,そのアルキル鎖の先端にリン原子含有部位を導入した新規配位子を得た.また,この配位子をロジウム錯体に導入し,その誘導体を含め数種の新規錯体触媒の合成に成功した.得られた錯体を用いてフェニルアセチレンを重合すると,単離収率67%で,数平均分子量M_n=69,000,分散比M_w/M_n=1.7のポリフェニルアセチレンが得られた.重合時のモノマー消費速度は,従来のRh触媒の場合と比較すると著しく低下していることがわかった.これは,配位子のホスフィン部位が金属中心の近傍に存在しており,モノマーと競争的に配位するためである.従来のRh触媒による置換アセチレン重合は重合速度が非常に速く,鍵となる中間体の観測や単離は困難であったが,同触媒を用いることで,今後,重合の開始反応等,詳細な解析が可能となる. 上記の多座配位子のホスフィン部位に代わり,キラルなアミン部位を導入した配位子を合成し,更に対応するロジウム錯体を合成した.得られた錯体を触媒として,らせん形成能を有するアキラルな置換アセチレンモノマーを重合すると,片方巻き優先のらせんポリマーを得ることができた.この反応は,触媒量のキラル情報を,らせんポリマーの巻き方向に反映するキラル増幅反応の一種であり,従来のキラル触媒に比べ使用する不斉化合物の量が少ない.あるいは触媒が容易かつ安価に合成できるという点において,本系が優れていることが示された.
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