大津らの方法によってポリフマル酸ジ-tert-ブチル(PDtBF)を合成し、それを分別精製した試料を準備した。PDtBF試料を180℃で2時間加熱し、側鎖のtert-ブチルエステル基をカルボキシ基に変換させることにより、PFAを得ることに成功した。PFAの生成は1H NMR測定によって確認した。 PFAの研究を進める上で必要となるPDtBFの分子物性に関する情報を得るために、分別精製したPDtBF試料について良溶媒であるテトラヒドロフラン(THF)中30℃において、静的および動的光散乱測定、粘度測定を行い、重量平均分子量、第二ビリアル係数、固有粘度、並進拡散係数を決定した。その結果を、以前に報告したPDiPFに対する結果と比較するとともに、みみず鎖モデルに基づいて解析し、PDtBFの剛直性パラメータおよび流体力学的な鎖の太さに関するパラメータの値を決定した。PDtBFはPDiPFに比べて、はるかに剛直な高分子であることを示した。PDtBFはPDiPFに比べて側鎖置換基がメチル基1個分だけ嵩高く、そのメチル基1個分の違いが高分子鎖の剛直性に大きな影響を及ぼしていることを明らかにした。 PFAのゲル化のための予備的実験として、ポリアクリル酸市販試料のglycerol diglycidyl etherまたはpoly(ethylene glycol)diglycidyl etherを用いた架橋反応によるゲル化を試行し、PFAのゲル化のために必要な情報の蓄積を行った。 今後、PFAを吸収性ポリマーとして応用する研究に発展することが期待される。
|