生体骨の主成分である水酸アパタイト(HAp)を利用した代替骨の開発が盛んに行われている。しかし、HApの機械的特性に着目すると、圧縮強度、曲げ強度は生体骨と比べて、数倍大きく、破壊靱性値は低く、ヤング率は骨よりはるかに大きいなど、生体骨と比べて強度がかなり異なる。生体骨と比べて、著しく強度が異なると、正常骨を破壊してしまうため、生体代替材料の強度としては、生体骨と同等の力学的強度が望ましい。本研究では、HAp多孔体を用いて、その多孔内でIn-situ重合により生分解性高分子を合成することにより、優れた力学的強度と生体適合性を有するバイオマテリアルを作製することを目的としている。特に、残存触媒の生体への影響が無視できる酵素触媒を用い、迅速かつ高収率での重合が期待されるマイクロ波を重合の際の加熱源として利用することにより、生分解性高分子/HAp複合体を作製した。 平成22年度は、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリε-カプロラクトン、ポリω-ペンタデカラクトン(PLLA、PGA、PCL、PDDL)のマイクロ波重合性を確認した。酵素としてリパーゼを利用することにより、分子量1万以上の各ポリマーが収率良くマイクロ波合成可能であることがわかった。また、その重合は熱効率の悪いHAp中でも同様に可能であり、従来の加熱法よりも短時間で同様のポリマーが得られることが分かった。 多孔性HAp中でIn-situ重合することにより得られた生分解性高分子/HAp複合体は人工骨材料として利用するのに十分な強度を有し、その強度は高分子の種類、また共重合によって、制御できることが分かった。また、その生分解性も高分子の組成により、調整できることが分かった。
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