研究概要 |
二酸化炭素(CO2)は、地球温暖化ガスのなかでも最も温暖化の影響度が大きなガス(60.1%)として知られており、その分離回収は環境問題・資源問題の観点から早急に開発されるべき課題である。本研究では、CO2と特異に相互作用し、構造柔軟性を付与できる含フッ素アニオンを有する金属錯体を吸着材料として用い、ゼオライトや活性炭などの従来の吸着材料では実現困難な各種混合ガス中からのCO2の完全分離を目指した。平成22年度は構造柔軟化と選択的CO2認識能を兼ね備える含フッ素アニオンの修飾を試み、従来用いてきたPF6アニオンに代わってCF3SO3アニオンを有する柔軟性銅金属錯体を合成した。その結果、CO2に対する吸着選択性を保持しつつ比表面積の更なる増加が観測された。比表面積値(^1,000m2/g)はこれまで報告されている1次元構造ベースの金属錯体で世界最高であった。またCF3SO3アニオンを有する柔軟性銅金属錯体のCO2吸着開始圧はPF6アニオンを有する錯体よりも高くなり、アニオンの表面原子に依存した柔軟性の違いが観測された。さらに、PF6アニオンとCF3SO3アニオンが共存した混合アニオン型1次元銅金属錯体の系統的合成を行い、単一アニオンから構築される金属錯体の特性の単なる足しあわせでは説明できない新規なCO2吸着挙動を観測することに成功した。したがって、アニオン混合化によってガス吸着空間の超精密制御が可能であることが見出された。
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