われわれは、無機半導体である酸化チタン(TiO_2)と有機電子受容体であるジシアノメチレン化合物から生成される新材料を見出し、この物質を光電極用いた有機系太陽電池の研究開発を行ってきた。本太陽電池は、TiO_2表面に化学結合しているTCNQ付加体からTiO_2伝導帯への界面電荷移動遷移により動作する新型太陽電池であり、新型低コスト太陽電池として期待される。本研究課題では、本太陽電池の高効率化を目的に、以下の研究を行った。 ◇新規共吸着剤による短絡電流密度の向上 本研究では、TiO_2への化学吸着基として水酸基を有する新規共吸着剤の検討を行った。幾つかの共吸着剤を検討した結果、直鎖状アルキル鎖の1位と2位の炭素原子に、水酸基を有するアルキルジオールを共吸着剤に用いることで、短絡電流密度が、約8mA/cm^2から約14A/cm^2に向上し、開放電圧も約0.35Vから約0.45Vまで増加した。入射光-電流変換効率(外部量子収率)は、可視域で約70%程度の高い値を示し、電荷分離効率が大幅に増加することが示された。 ◇カチオン効果による開放電圧の向上 上記の共吸着剤を用いた場合において、グアニジニウムカチオンを本太陽電池の電解液に添加するにより光電流を保持したまま、開放電圧が0.5V近くまで向上することを見出した。 ◇過渡電圧測定装置の構築 太陽光電池の高効率化に向けて、電荷分離効率の向上は非常に重要である。電荷分離効率を向上させるためには、逆電子移動の抑制が必要である。本研究では、逆電子移動に関する知見を得るために、オシロスコープとレーザーダイオードを用いて、過渡電圧測定装置を構築した。この装置を用いて、本太陽電池に矩形波の励起光を照射して過渡電圧応答を検出したところ、逆電子移動過程のダイナミクスを反映している電圧の時間変化を観測することができた。
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