高速に1度で複数電子を授受出来る有機物質の電極反応の律速(電位逆転)機構を応用し、複数電子が関与する電子メディエータ、光電応答・電荷分離材料、高速応答電極に用いることを目的としている。テトラフェニルエテンを基本ユニットとする1段階2電子移動応答分子の性質を保ちながらπ共役分子または、アルキル基で連結して高分子化し、構造の大きな1段階多電子移動高分子を実現したい。 Tetrakis (4-dimethylaminophenyl)-ethene (TAE)誘導体は、etheneを介して反対側にN原子が有るとき、有機溶媒中サイクリックボルタンメトリー測定においてAg/Ag^+参照電極に対してOV付近で電位逆転に基づく1段階2電子酸化還元反応を示す。TAE誘導体を複数結合することで、電子移動数が増大出来ると考えた。π共役を介して結合したオリゴマー2量体(ABA)と3量体(ABBA)と、エタンで結合した2量体(E2)と3量体(E3)を合成し、電気化学測定、分光電気化学測定により電子移動数を決定した。 π共役分子でTAEを結合したオリゴマーのABAとABBAは、2電子移動サイト間の相互作用が強いため、最初の2電子移動だけ、1段階で進行し、3電子目移行の移動は、段階的に生起した。ABBAでは、2電子移動ユニットは、高酸化電位でも閉殻構造を取って安定なため、-0.1~1.0Vの電位を掃引することで、10電子移動できることが確認出来た。 一方、エテン分子でTAEを結合したオリゴマーのE2とE3は、2電子移動サイト間の相互作用が全くないことが分かり、E2では、4電子、E3では、4電子+2電子が、同時に移動することが分かった。
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