カルバゾール架橋型環状パイ共役分子の合成と機能評価を行った。90度の結合角を可能とするカルバゾールのジヨード体(化合物1)を既知法によって合成した。合成した化合物1とジブロモポルフィリン(化合物2)をPd(0)触媒を用いたカップリング反応でポルフィリン連鎖体の混合物を得た。この混合物をゲル濾過HPLCによって分離し、ポルフィリン環状4量体(化合物3)を単離した。構造決定はNMP質量分析により行った.合成した連鎖体は単量体と比べ、Q-バンドの長波長シフトと吸収強度の増大が見られたことからパイ共役系の拡張が示された。合成した構造体の二光子吸収断面積をOpen-aperture Z scal/法(5ns)を用いて測定したところ、4量体は760nm付近において約380000GMという非常に大きな値が得られた。パイ共役系の拡張の効果とともにQ-バンドの長波長シフトと吸収強度の増大による共鳴増強効果が影響しため、大きな増大が見られたと考えられる。分子軌道計算から得られるパイ電子構造と測定から得られる二光子吸収特性との開に相関が認められ、環状パイ共役分子とした優位性が示された。次の課題はカルバゾールのみで環状体を構築し、蛍光の弱いポルフィリン系では達成できない二光子蛍光材料の開発である。以上当初の計画通り環状ナノフォトニクスシステムの開発に成功し、二光子吸収断面積の増大に及ぼす環状パイ共役化の効果を明らかにした。
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