研究概要 |
グラファイトの部分構造であるグラフェンナノリボンは,理論的・実験的側面からシリコンを凌駕する電気特性を示すことが注目されている次世代の半導体材料である.従来は量産に不向きかつ多大な労力が必要なトップダウン手法による作成・評価が行われてきたが,均質な材料を量産し実用化を目指すには化学合成による大量合成手法の開拓が切望されている.本研究課題では,有機低分子を設計・合成し,これを用いた金属基板界面を用いた重合によって導電性グラフェンナノワイヤの精密合成手法の開拓に取り組んだ.平成22年度は、(1)有機低分子原料として,新規に設計したハロゲン化縮環芳香族分子原料のモジュール合成手法の確立、(2)有機低分子原料の表面重合の確認を目標として研究を遂行した.有機低分子原料の設計・合成手法の確立は、新設計の分子群4系統(計10種)について目的化合物の合成を達成した。また、ある種の金属触媒を用いる環化反応において、類似の報告例を上回る分子内複数部位の環化反応の高効率化に成功した,有機低分子原料の表面重合については,共役の発達した材料の生成をラマン分光法によって観察することに成功した,具体的には,金属単結晶表面に真空蒸着による分子薄膜,電気化学・熱処理による前駆体高分子合成薄膜の形成を行い,つづく加熱処理によって熱転化炭素材料の生成条件を検討した.以上の成果は,当初目的を概ね達成しており,平成23年度に学術論文として成果を発表する予定である。
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