研究概要 |
グラファイトの部分構造であるグラフェンナノリボンは,理論的・実験的側面からシリコンを凌駕する電気特性を示すことが注目されている次世代の半導体材料である.従来は量産に不向きかつ多大な労力が必要なトップダウン手法による作成・評価が行われてきたが,均質な材料を量産し実用化を目指すには化学合成による大量合成手法の開拓が切望されている.本研究課題では,有機低分子を設計・合成し,これを用いた金属基板界面を用いた重合によって導電性グラフェンナノワイヤの精密合成手法の開拓に取り組んだ.平成23年度は,(1)有機低分子原料として用いる,ハロゲン化縮環芳香族分子原料の合成反応の展開,(2)有機低分子原料の表面重合手法の開拓を目標として研究を遂行した.ハロゲン化縮環芳香族分子の合成反応の展開において,きわめて高効率かつ高選択的な反応条件を開拓することに成功し,成果を論文発表した.有機低分子原料の表面重合については,電気化学的手法と熱変換を組み合わせる手法を開発した.ベンゾオトリチオフェン分子を用いる二次元性材料の作成について,成果を論文発表した.また縮環炭化水素化合物への適用を検討することにより,本課題で目的としたグラフェンナノリボン分子細線の作成を示唆する結果を得た.以上の成果は,当初目的を十分達成することができた.
|