研究概要 |
エネルギーを必要に応じて貯蔵し、使用することの出来る二次電池は今日の情報社会において重要なものである。そこで本研究では次世代高性能二次電池の開発を目指して、正極活物質として優れた性質を持つ有機化合物の創成を行っている。これまでの研究により、フェナジン5,10-ジオキシド(1)を用いた電池は、リチウムイオン電池の実効容量(150Ah/kg)を超え(250Ah/kg)、300回充放電を繰り返しても減少することなく、維持するという結果を得ている。そこで、5,10-ジヒドロフェナジン(2)を用い、オキサミド型ポリマー3を合成し、充放電測定を行ったが、その容量は250AM(gであり、高容量を示す真の活物質ではないことがわかった。また、オキサミド構造を持たない5,10-ジヒドロフェナジン誘導体であるN,N'-ジアセチル-5,10-ジヒドロフェナジン(4)、N,N'-ジベンゾイル-5,10-ジヒドロフェナジン(5)およびN,N'-ビス(エトキシカルボニル)-5,10-ジヒドロフェナジン(6)を合成し、それらの電池特性を検討したが、いずれの場合もリチウムイオン電池の実効容量を超える容量は示さなかった。以上の結果より、フェナジン系正極活物質の高容量化において、オキサミド構造が有効であることが明らかとなった。 また正極活物質の1分子あたりの理論容量は「理論容量=n・F/3.6・Mw」(n:1分子中の官能基数,F:ファラデー定数,Mw:分子量)で算出される。そのため、反応に関与する電子数が等しければ、分子量のより小さい分子を活物質として用いることで、さらなる容量増加が期待できるため、より分子量の小さいジアジン系化合物であるキノキサリン1,4-ジオキシド(7)および2,3-ジメチルキノキサリン1,4-ジオキシド(8)を合成し、その電池特性を検討した結果、7を正極活物質として用いた電池では初回の放電容量が800Ah/kgを超えるという興味深い結果が得られた。また、Sを用いた場合も1回目の放電容量が500Ah/kgと大きい値を示すことを明らかにした。しかし、どちらの場合も充放電サイクルの増加とともに、急激な容量減少が見られた。サイクル特性の改善が今後の検討課題である。
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