研究概要 |
エネルギーを必要に応じて貯蔵し、使用することの出来る二次電池は今日の情報社会において重要なものである。そこで本研究では次世代高性能二次電池の開発を目指して、正極活物質として優れた性質を持つ有機化合物の創成を行っている。これまでの研究で分子内にオキサミド構造を持つポリマー1を合成し、その充放電挙動を調査した結果、反応に多電子が関与すること、また充放電容量が約 200 Ah/kg であることを明らかにした。 そこで今年度はジチオオキサミド骨格に着目し、ジチオオキサミド誘導体2の正極活物質としての評価を行った。この化合物は還元体において、負電荷が硫黄上に存在すると考えられ、酸素上に存在するポリマー1と比べて、ジアニオンが安定であるため、より安定な充放電反応が期待できる。 ジチオオキサミド(2a)の充放電測定をおこなった結果、初回の放電でリチウムイオン電池の実効容量(150 Ah/kg)を上回る容量密度(446.0 Ah/kg)を示すことが明らかとなった。しかしサイクル数の増加とともに容量密度も大きく低下し、可逆性は見られなかった。続いて、N,N’-ジメチル誘導体2bの充放電測定を行った結果、初回放電時に2電子反応の理論容量(361.5 Ah/kg)を超える420 Ah/kgを示すことがわかった。しかし、この場合もサイクル特性が悪く、可逆性は見られなかった。 以上のようにジチオオキサミド誘導体2は多電子型充放電反応を起こすことを明らかにした。また、初回放電容量密度は現行のリチウムイオン電池の実効容量 (150 Ah/kg) を超える容量を示すことを明らかにした。このことから、ジチオオキサミド誘導体は次世代高容量二次電池の活物質として期待できる。しかし、サイクル数の増加とともに容量も減少していくことがわかった。今後の課題としては、いかにサイクル特性を上げていくかが挙げられる。
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