光による逆ミセルの破壊を実現し、生体高分子を内蔵した逆ミセルの分離抽出システムへの展開を目指した。マラカイトグリーン誘導体は光でカチオン性界面活性剤に変化する光応答性分子であり、アニオン性界面活性剤から成る逆ミセルと共存させると、光照射により静電的な相互作用が生じ、逆ミセルを破壊させることができる。逆ミセル形成には、アニオン性界面活性剤のビス(2-エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム(AOT)を1.0mMの濃度でクロロホルムに溶解させ、これを水溶液と攪拌することによりサンプルとした。カールフィッシャー法で有機相中の水分量変化を測定し、有機相中の水分量減少により逆ミセル破壊の評価を行った。溶媒のクロロホルムに溶解する水分量に比べ逆ミセル形成が寄与する水分量変化が少ないため、正確に破壊の評価を行うことができないことが分かった。そこで、核磁気共鳴による逆ミセル破壊の評価を行った。逆ミセル内の水のピーク位置から水分量の変化を知ることができ、マラカイトグリーン誘導体を添加し光照射を行うことにより、有機相中の水分量は減少することが明らかとなった。マラカイトグリーンの光イオン化率は0.4%であり、AOTと1対1の錯体を作るにはマラカイトグリーンは50mM以上必要であることが明らかとなった。さらにこの逆ミセルに、生体高分子としてリボヌクレアーゼを抽出させ、0.9g/Lの濃度でリボヌクレアーゼを逆ミセルに溶解させることが出来た。光照射したマラカイトグリーン(60mM)により、30%のリボヌクレアーゼが水溶液へ放出されることが分かった。一方、光未照射下ではリボヌクレアーゼはほとんど放出されなかった。
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