光による逆ミセルの破壊を実現し、生体高分子を内蔵した逆ミセルの分離抽出システムへの展開を目指した。長鎖アルキル基を有するマラカイトグリーン誘導体は、光でカチオン性界面活性剤に変化する光応答性分子であり、光照射によって逆ミセルを発生させることができる。さらに、マラカイトグリーンなどのトリフェニルメチルカチオンはDNAと相互作用することが分かっているため、このマラカイトグリーンの高い親和力を活かした選択的なDNA分離抽出が可能と考えられる。そこで、カチオン性界面活性剤の塩化セチルトリメチルアンモニウムとマラカイトグリーン誘導体をクロロホルム溶液に加え、水溶液中のDNA抽出を試みたところ、光照射により逆ミセル相となる有機相への抽出が促進されることが分かった。一方、アニオン性界面活性剤のビス(2-エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウムとマラカイトグリーン誘導体を加えた場合では、光照射後も全くDNAは逆ミセル相に移動しなかった。さらに、長鎖アルキル基を持たないマラカイトグリーンでは、光イオン化後に、逆ミセル相から水相に移動し、DNA抽出に寄与しないことが分かった。これらの結果より、有機相への分配が有利なマラカイトグリーン誘導体を用いることで、逆ミセルに抽出されたDNAは、逆ミセル内部の静電的な相互作用によって安定に存在することが示された。
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