π共役MC分子とDNAからなる超分子複合体の構築とその機能化を目的とする。この包接複合体は、MCのπ共役部位とDNAの核酸塩基対が、それぞれ独立にスタックした1次元の電荷(正孔および電子)輸送パスを有することが期待されるため、同時に2種の電荷輸送が可能な積層構造を形成することが可能であると考えられる。これにより、光照射により生成した2種の電荷をそれぞれの伝導パスで輸送することで、太陽電池の構築を目指す。 本年度は、初めにMCの合成を行った。初めに、MCの3分の1のビルディングブロックを得るため、芳香族への臭素化、ヨウ素化、およびアルキル化、アセチレン部位導入のための薗頭カップリング反応を行った。これらのステップの収率は70‐90%であった。その後、反応性を向上させるために、臭素をヨウ素に置換後、薗頭カップリング反応を行い、保護基であるトリメチルシリル部位をTBAFで取り除くことでMCの3分の1のビルディングブロックを得た。最後に、合成したMC前駆体を用いた薗頭カップリング反応を行い、カラムクロマトグラフィにより精製後、再結晶を行うことで薄黄色固体のMCを収率20%で得た。MCの同定は、1H-および13C-NMRを用いて行った。また、MCはクロロホルム、THF、酢酸エチル等、汎用の有機溶媒に対して溶解性を示した。さらに、分子モデリングによりMCの空孔サイズを確認し、MCの電子特性は紫外可視吸収および蛍光スペクトル測定で明らかにした。また、MCの骨格として様々なπ共役分子に着目し、それらの分子が様々な機能を発現することを見出した。
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