研究概要 |
今年度は、これまで環境中の汚染実態が不明であった殺菌防腐剤パラベンの濃度分布を明らかにするため、その分析手法の確立を進めてきた。当研究室において合成した塩素化体を含む23物質のパラベンを対象に分析条件等の精度管理を検討した。確立した分析法に基づき、河川水、下水処理水、下水の分析を実施した。続いて、これらの定量情報を解析したところ、パラベンは環境水の懸濁成分中に塩素化体として存在することを確認した。存在量の多い上位物質は、防腐剤として使用頻度の高いメチルパラベンやプロピルパラベンに起因する物質であることが判明した。次に、水環境中に存在する塩素化パラベンの太陽光による影響を探るため、二塩素化プロピルパラベン(Cl-PrP)をモデル物質に、水溶液中での模擬太陽光照射を実施した。33日間の照射でCl-PrPは初期濃度の14%にまで減少し、その半減期は一次分解反応と仮定したとき、8.4日と算出された。主要な光変換生成物として、一塩素化プロピルパラベン(1)および3-クロロ-4-ヒドロキシ安息香酸(2)は標準品により、3-クロロ-4,5-ジヒドロキシ安息香酸プロピルは、別途、(1)から三段階の反応で得られた合成標品により同定した。変換生成物(3)の収率は、照射24時間で33%、33日間で42%となった。この照射時間に対する緩やかな収率の増加は、本紫外線照射光に対する生成物(3)の光安定性を示唆している。なお、生成物(3)は新物質であることが判明している。
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