研究課題
今年度は、防腐剤パラベンとその関連物質の水圏における存在形態と生態毒性を調査した。はじめに、河川水をフィルター(粒子保持能1.6μm)でろ過した懸濁相中濃度と、通水後の溶存水中濃度を計測した。検出された塩素化パラベン6物質は懸濁相に分配する一方、親パラベン(塩素を有さない)4物質は溶存相に分配されることが判明した。これは芳香環の塩素置換ともない疎水性が高まり、懸濁物質に対する相互作用が増すことで説明できる。次いで、河川中で検出した塩素化パラベンの発生源を推定するため、モデル物質のプロピルパラベンを塩素水(水道水)に添加した。パラベンの塩素化を一次反応と仮定すると、速度定数(k)=0.22、半減期(t_<1/2>)=2.2minと見積もられた。河川から検出される塩素化パラベンは、水道水との接触で直ちに塩素化され、水圏に拡散していることを裏付けた。一方、生態毒性として、エストロゲン活性および脊椎動物の催奇形作用に関与するレチノイン酸受容体活性を酵母two-hybridアッセイ法により評価した。エストロゲン活性は、ヒト受容体試験系では8物質が活性を示し、リガンドであるエストラジオールに対して10^<-5>-10^<-4>の相対活性を示した。同様に、メダカ受容体試験系では12物質が活性を示し、エストラジオールに対して10^<-5>-10^<-2>の相対活性を示した。エステル部の鎖長増加に伴い活性は強くなるが、塩素置換体の活性は親パラベンよりも減少した。このような塩素化に伴う活性低下はノニルフェノールとその塩素置換体、エストロンとその塩素置換体の活性挙動と同様の傾向であった。一方、レチノイン酸受容体活性は6物質が活性を示し、リガンドであるトランスレチノイン酸に対して10^<-5>-10^<-4>の相対活性を示した。炭素数3以上の側鎖を有するパラベンで活性が認められた。特に、使用頻度の高いプロピルパラベンは、そのものでは活性を有さないが、塩素化されると活性が発現することが判明した。
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Environ Chem Lett, peer-reviewed journal
巻: (in press)
DOI:10.1007/s10311-012-0367-1