研究概要 |
近年、社会要請が高まるグリーンケミストリーおよびアトムエコノミーの観点から地球資源の有効活用および環境調和の案件を満たす次世代環境調和型遷移金属触媒反応システムの確立が急務とされている。本研究課題では、上記案件を共に満たす水中有機分子変換反応を実現する高分子担持銅触媒の創製を目指し、これまで研究を展開してきた。本年度は、昨年度で達成した両親媒性ポリスチレン-ポリエチレングリコール(PS-PEG)レジン担持トリアザシクロノナン配位子の銅錯体の創製の知見に基づき、不斉有機分子変換反応を実現できる高分子担持銅触媒の創製を目指し、ポリマーへの固定化が期待できる不斉配位子の検索、その不斉銅錯体を用いた不斉有機分子変換反応について検討を行った。 我々がこれまでに開発してきたキラルイミダゾインドールフォスフィン配位子と銅(I)イオンと作用させることにより銅(I)-キラルイミダゾインドールフォスフィン錯体を調製した。一連の反応条件スクリーニングにより、このキラル銅(I)錯体が、種々のフェノール誘導体とα-ジアゾカルボニル化合物との反応を効率良く触媒することを見出し、その反応の目的化合物であるフェノールO-H結合挿入化合物が最高67%収率、91% eeで得られた(Organic Letters 2012, 14, 194-197)。本研究成果により、キラルイミダゾインドールフォスフィン配位子が銅触媒による不斉有機分子変換反応に有効であることが明らかとなったので、高分子担持不斉銅触媒の創製を目指し、両親媒性ポリスチレン-ポリエチレングリコール(PS-PEG)レジン担持キラルイミダゾインドールフォスフィン配位子の合成を行った。現在は、その銅錯体の調製および、高分子担持銅触媒を用いた不斉有機分子変換反応の検索へと研究が発展している。
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