研究課題
本研究では、細胞機能解明の基盤技術として、特にシグナル伝達物質を光放出する技術(ケージド化合物)の高性能化のための研究を行っている。 特に今回は、細胞の興奮性(カルシウムスパイク)や、細胞外酵素の活性化物質をしての役割も有するカルシウムイオンを光で発生させる新しい光機能性分子として、カルシウムキレート試薬として広く用いられているBAPTAの分子骨格を利用した新規分子を合成した。BAPTAのカルシウムイオン、マグネシウムイオンとの安定度定数はlogKCa=6.97, logKMg=1.77、であり、中性付近でのCa2+に対する高選択的キレート剤である。BAPTAのベンゼン環に、非常に効率の良い光反応を起こす2,4-ジニトロベンジル基を導入した。これに光照射を行うと、ジニトロベンジル基が光分解反応を起こしてBAPTAのベンゼン環と、ジニトロベンジル基がC=O部位を介して共役したベンゾフェノン骨格が生成するため、BAPTA部位のカルシウム親和性が大きく低下すると考えた。しかし、実際は光反応性が著しく低下することが分かった。これは、基底状態でBAPTA部位とジニトロベンジル基が電荷移動相互作用をするからと考えられる。また別の新規光分解性保護基として、ニトロアニリン骨格を用いた一連のケージド化合物を合成し光分解反応を確認した。アミド結合を芳香環の2-位のニトロ基によって解裂させる光分解部位を有しおり、保護基とカルボン酸がアミド結合によって結合していることから暗所での安定性が高いという利点がある。また、アミド結合を形成している窒素原子に親水性の置換基を導入することで水溶性を向上させており、水溶性を保持したまま、芳香環に様々な置換基を導入することが可能である。すなわちこれらは生体内の環境に近い中性水溶液中での光物性や置換基効果について検討するために適した骨格であると言える。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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