mRNAの翻訳速度を定量化するために、ストレプトアビジン結合性ペプチド(Streptavidin Binding Peptide ; SBP)とその上流にT7tagを複数個連結したDNAを作成し、in vitro転写によりmRNAを調製した。このmRNAを用いて水晶発振子(Quartz-Crystal Microbalance ; QCM)の基板にストレプトアビジンを固定化したセル中で翻訳反応を起こすことで、合成されたSBPを介してリボソームを基板上に結合させた。その結果質量が増加したため、振動数減少が観察された。T7tagの個数を変化させることにより、翻訳されるmRNA長が変わり、SBPがリボソームから合成されるタイミングが変わるため、振動数変化が始まる時間は各mRNAによって異なった。そのタイムラグを合成されるポリペプチド鎖長に対してプロットすると、良い直線性を示し、翻訳速度を求めることができた。また前年度に調製した各tRNAを添加して翻訳を行うことで、レアコドンや内部Shine-Dalgarno配列による翻訳速度に与える影響を評価することができた。様々なタンパク質をコードする配列についても同様に、各翻訳速度を評価したところ、いずれもT7-tagとは異なる速度を示した。tRNA添加実験によりコドンの効果をキャンセルしても一致しなかったことから、各遺伝子はコドンの他にもmRNAの二次構造、リボソームと相互作用するある特定の配列の効果によって翻訳速度が決定されていることが示唆された。翻訳されたタンパク質の効果も一つの要因と考えられるため、翻訳されたタンパク質の物性と相関付ける必要がある。そのために、現在、特別な立体構造をとらないタンパク質やαヘリックス含量が異なるタンパク質をコードするmRNAの翻訳に関して粘弾性と翻訳速度に対する関連性について評価を行っている。
|