本年度では、前年度開発したインスレーター(イソプロピルシクロヘキサン)を用いて、様々な蛍光性DNAプローブの高輝度化を目指した。まず、環境応答性色素であるナイルレッドをDNAに導入し、色素-核酸塩基間にインスレーターを導入することによって、ナイルレッドの高輝度化を図った。その結果、インスレーターを導入せずナイルレッドのみを導入した配列では、弱い蛍光しか観察されなかった。それに対し、インスレーターを核酸塩基と色素との間に導入したところ、ナイルレッドの発光が12倍増大した。また、その際ナイルレッドの発光波長は水中でのモノマーの値と比較してほとんど変化し-なかったことから、疎水的なインスレーターを導入しているにもかかわらず、色素周囲の環境は親水的であることが分かった。以上のことから、観察されたインスレーター導入による蛍光色素の高輝度化は、疎水的環境が原因ではなく、核酸塩基との電子移動を抑制することによるものであることが明らかとなった。 更に、より汎用性の高い色素であるFITCについてもインスレーター導入による高輝度化について検討した。FITCは核酸のラベル化において非常によく用いられているが、核酸塩基(特にグアニン)との電子移動によって消光することが知られている。そこで、FITCを末端た導入した配列についてインスレーターを導入した効果を調べた。その結果、FITC-核酸塩基間にインスレーターを二分子導入することによってFITCの蛍光強度を3倍以上増大させることに成功した。このようにインスレーターに-よる高輝度化はFITCのような汎用性の高い蛍光色素であっても有効であることを明らかにした。
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