研究概要 |
様々な要因によりDNA配列中に蓄積されていく突然変異は、癌や生物個体の加齢の原因となることが報告されている。そのため、突然変異発生のメカニズムの解明、及び抑制方法に関する研究は極めて重要な課題である。そこで我々は、「DNA突然変異の要因である変異原性核酸の特異的認識モチーフの開発及びその応用」を本課題の目的とするして研究を行った。 平成22年度は、変異原性核酸の中で最も出現頻度の高い8-オキソグアニン(8oxoG)を標的核酸として研究を行った。8oxoGは8位に酸素原子をもつため、donor-acceptor-donor型の水素結合様式と、syn型のグリコシド結合を持つ。その結果、8oxoGはグアニンの誘導体であるにもかかわらずチミンと同等の水素結合能を持つ。そこで、二重鎖中に生成した8oxoG-C塩基対はT-Cミスマッチ塩基対と同等の性質を示すと仮説を立て、T-Cミスマッチ塩基対に結合するリガンドを基本骨格に持つ有機小分子の合成とスクリーニングを行い、8oxoG-C塩基対の特異的認識モチーフの構築を目指した。ジアミノナフチリジンが、シトシンとチミンと擬似塩基対を形成できることをすでに報告しているため、ジアミノナフチリジン誘導体をスクリーニングの手がかりの分子として合成を始めた。また、ジアミノナフチリジン誘導体と8oxoGとの結合能を評価するために、8oxoGバルジ構造をもつDNA二重鎖とジアミノナフチリジンとの結合を評価した。その結果、7-(アミノエチル)ジアミノ-1,8-ナフチリジンと8oxoGバルジ構造をもつDNA二重鎖との結合定数は非常に小さいことが明らかとなった。
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