B-Z転移化合物によって、がん抑制遺伝子の発現を促すシステムを構築するために、生理的条件下で作用するB-Z転移化合物の設計を行う。一般的に高濃度のカチオン(4M 塩化ナトリウム等)はB-Z転移を誘起することが知られている。しかし、細胞中でB-Z転移を誘起させるには、高濃度のカチオンを用いるわけにはいかない。すなわち、生理的条件下でB-Z転移を誘起する化合物を用いる必要がある。ところが、生理的条件下でB-Z転移を誘起できる化合物は数種しかなく、さらにそれらの化合物はスペルミン等のオリゴカチオンであり、細胞内でB-Z転移を誘起させるにはDNAに対する結合力が低いことが予想される。本年度は、DNAに対して高い親和性を有すると予測される種々のカチオン性高分子を主鎖に、親水性のデキストランやPEG等をグ側鎖に持つカチオン性グラフト共重合体を様々に合成した。イオン交換および透析をによって精製し、NMRによってキャラクタリゼーションをおこなった。CDスペクトル、UVスペクトルによりpoly[d(G-C)/d(G-C)]に対してB-Z転移能を評価した。その結果、一部の共重合体については、効果的にB-Z転移を誘起する化合物であることが示された。グラフト率が上昇するにつれ、その転移能が効果的に上昇することが示された。
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