DNAのメチル化は細胞の発生や分化を制御し、癌化にも密接に関連しているため、メチル化解析技術の開発は生命現象の解明のみならず疾患の原因解明や医療への応用も期待され、重要性が高い。一般的なメチル化検出法である亜硫酸水素塩法や我々がこれまでに開発したオスミウム酸化法は、サンプルDNAを一本鎖に解離する煩雑性がある。本研究は、穏和な条件で二本鎖DNAのメチル化をそのまま簡便に検出するために、亜鉛フィンガー蛋白質を基本骨格として二本鎖DNAのメチル化を特異的に認識する人工蛋白質を作製し、これを用いてDNAメチル化の検出および可視化を目指している。昨年度は、亜鉛フィンガーを基本骨格とした人工蛋白質の分子設計を行い、メチルシトシンを有するDNAを特異的に認識するペプチドを得た。H23年度は、ペプチドの応用展開として、メチル化認識配列の多様化とメチル化DNA検出法の開発を行った。 メチル化認識配列の多様化を目指して、前年度にモデリング計算から得た亜鉛フィンガー-DNA複合体の構造を基に、α-ヘリックス領域のアミノ酸残基を改変したペプチドを作製した。メチル化DNAの認識能をゲルシフトアッセイを用いて評価した結果、アミノ酸改変前の標的配列とは結合せず、異なる標的配列に対して十分なメチル化認識能を示した。 次に、迅速かつ簡便なメチル化DNA検出法の開発を目指して、メチル化配列を有するゲノムDNAを用いて蛍光偏光測定を行った。コントロールにはゲノムDNAを脱メチル化処理した非メチル化DNA使用した。蛍光ラベルしたペプチドにゲノムDNAを添加すると、DNAの増加に伴い蛍光異方性が大きく増大した。一方、非メチル化DNAでは蛍光異方性の変化は認められなかった。プラスミドDNAを用いた実験でも同様の結果が得られ、蛍光異方性の増大量はメチル化配列の含有数に依存した。以上の結果からメチル化配列の簡便な定量検出が可能であることが示された。
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