これまで我々は、有機ELなどに用いられるホール輸送材料(=ドナー性材料)と、n型有機半導体材料を積層した有機電界効果型トランジスタ(有機FET)において、n型有機FETで一般的に悪いとされる大気下の安定性を著しく改善できることを見いだしている。 今年度は、同様のメカニズムが逆の組み合わせ、すなわち、電子輸送性材料(=アクセプター性材料)とp型有機半導体材料の積層系でも発現するのかを検証した。具体的には、p型半導体層として最も標準的なペンタセンを用い、電子輸送性材料として有機ELに用いられる電子輸送性材料11種類(ピリジン環、トリアジン環、カルバゾール環、フェナントロリン環などを有するもの)と、有機半導体としても用いられるn型有機半導体2種類(ナフタレンテトラカルボン酸など)を用い、その積層構造がFET特性に及ぼす効果を、電子的な影響と薄膜構造への影響の2つの観点から系統的に検証した。その結果、p型有機半導体材料の場合においても、ピリジン環を有する材料などのいくつかの材料において初期特性向上の効果が見られた。これは、ドナー性材料/n型半導体材料の組み合わせとは逆のメカニズム、すなわち、アクセプター性材料によってペンタセン中のトラップをあらかじめホールで充填することにより、ホールの移動度低下が低減された結果であると考えられる。 また、従来のドナー性材料/n型半導体材料の組み合わせにおける性能改善の効果について、共同研究先のn型有機半導体材料に対して適用し様々な材料における一般性を検証した。
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