研究概要 |
有機電界発光(EL)素子の発光効率およびその劣化特性は、駆動中の素子内に蓄積される電荷量と密接に関係することが報告されている。我々は、代表的な有機EL材料であるAlq_3分子を含む素子において、その蓄積電荷量が環境光などの素子作製条件により大きく変化することを見出し、Alq_3蒸着膜が持つ配向分極との関連を指摘した。有機EL材料には永久双極子を持つものは多いが、それが発光効率やその劣化特性に与える影響は深く研究されていない。本研究ではAlq_3以外の有機EL材料についても配向分極と界面電荷との対応を示し、さらに素子特性、劣化特性との関連を調べることにより、その重要性を裏付ける。有機蒸着膜の配向分極に着目し、素子作製条件の依存性に関するミクロスコピックな原因の究明、および素子内の蓄積電荷が素子特性やその劣化特性に及ぼす影響について広く一般に明らかにすることを目的とする。 昨年度は、Alq_3分子だけなく、TPBi,BCP,OXD-7,Bphenといった他の有機EL材料でもその蒸着膜に自発的な配向分極が生じることを変位電流(DCM)、インピーダンス分光(IS)、ケルビンピローブによる表面電位測定により明らかにした。上記材料は永久双極子を持つが、無極性分子(UGH-2,CBP)では、同様の現象が起きないことを確認した。また、配向分極が大きい程、素子内に蓄積される電荷量も大きくなる傾向を見いだした。OXD-7蒸着膜ではAlq_3のほぼ倍の蓄積電荷量があることがわかった。また、極性分子と無極性分子の界面では、界面に沿った電気伝導度に著しく差があり、素子特性にも強く影響することが明らかになった。Alq_3を含む有機EL素子では、駆動劣化に伴いAlq_3膜中に正孔トラップが生じ、実効的な蓄積電荷量を減少させることがわかった。
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