金属ナノ構造体は、表面プラズモンなどの光学特性が形状や配列状態に依存して変化する。本研究では、チオール分子の自己組織化単分子膜で表面を修飾した銀(Ag)ナノキューブをテンプレートとして、位置選択的に金(Au)を電析したのち、Agを酸化溶解することにより作製したAuナノフレームのプラズモン特性を研究している。本年度は、近赤外光によりAuナノフレーム上に電場増強場が形成されることを、ポリマーの二光子励起による重合反応を用いて評価した。ラングミュア-ブロジェット法を用いて、5mN/mの表面圧でITO基板上に集積したAgキューブをテンプレートとしてAuナノフレーム(粒径約150nm)を作製した。吸収スペクトルの測定から、Auナノフレームは、可視~近赤外光領域に光吸収を持つことが明らかになった。この基板上に光硬化性樹脂(SU-8)モノマーをスピンコートしたのち、800nmのレーザーを照射したところ、Auナノフレームの内部および表面部分に重合体の生成が確認された。通常、SU-8の重合は紫外光照射により重合する。しかしながら本系では、近赤外光によりAuナノフレーム上で重合が進行しており、Auナノフレーム上に光電場増強場が形成し、これを反応場として二光子励起による重合が進行したことが示唆される。また、ポリマーが生成した位置は、FDTD計算から見積もられた増強電場の位置とよい相関が見られた。以上のように、Auナノフレームに近赤外光を照射することにより、フレーム上で二光子励起反応を起こすことができることが明らかとなった。
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