金属ナノ構造体は、表面プラズモンなどの光学特性が形状や配列状態に依存して変化する。本研究では、金属ナノ構造体と半導体材料を複合化することにより、表面プラズモン共鳴を利用して半導体材料の光電変換特性の高効率化、光応答波長の長波長化を目指すものである。本年度、銀ナノキューブをテンプレートに用い、厳密な電気化学電位制御下で、鉛および硫黄を原子一層レベルで交互にアンダーポテンシャル析出することにより、銀ナノキューブの(100)表面への硫化鉛薄膜の形成を試みた。この時、積層回数で硫化鉛の厚みを制御し、量子サイズ効果による光応答波長の制御を試みた。平均粒径125nmの銀ナノキューブを透明電極上に担持した後、硫化ナトリウム水溶液、および過塩素酸鉛水溶液中で、硫黄および鉛を交互に積層した。積層に伴って可視光領域の吸光度が増加するとともに、10層、20層積層した試料の元素分析から、硫黄と鉛の析出が確認できた。しかしながらX線回折からは、銀ナノキューブの回折パターンのみが得られ、硫化鉛結晶を検出することはできなかった。一方、透過型電子顕微鏡観察から、鉛と硫黄を20層積層したナノキューブの表面は、銀とは異なるコントラストの層が約6nmの厚みでほぼ均一に形成していることがわかった。元素分析、光吸収の結果と合わせて考えると、銀ナノキューブの(100)表面に硫化鉛が均一に積層し、積層回数により光吸収特性の変調が可能であることが示唆される。今後、プラズモン共鳴波長とのマッチングを考慮した形状制御を行うことにより、高効率な光電変換材料となることが期待される。
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