研究概要 |
本年度においては,ナノテクノロジーを駆使する際に問われる「時間的・金銭的コスト」と「加工精度」の2つの重要な因子について,微細加工技術およびナノ材料を用いた現実の解を見つけるための考察や材料設計を中心に活動を行った.加工精度は手法への依存度が高いが,概して言えば,基板からの距離が離れるに従って精度は下がり,コストは上がると考えられる.特に燃料電池では,電極などの各構成要素を3次元空間で組み合わせてデバイスにするため,この現実の制約を無視して突き進んだ場合には,学術的な興味のみに留まってしまい実用デバイスへ知見が広がらない恐れがある.そこで,昨年度までも用いてきた電気化学合成法と比較的安価な乾式法を組み合わせながら,ナノ構造を有した電極の合成と,その位置を3次元空間においてナノスケールで制御することを試みた.各構成要素に関しては,例えばPtの薄膜電極へ数ナノスケールの細孔形成や数十~数百ナノスケールでの位置決めに成功しており,各部位では非常に魅力的な成果が出つつある.また同様の構造体を金やパラジウム,酸化シリコンでも実現しており,それらを組み合わせることで燃料電池の実現が期待できる.然しながら,実際にデバイスへと組み上げる際に,次の課題として「異なる材料間でのアッセンブリの難しさ」が顕著に出てきた.このことは,ナノテクノロジーを用いたデバイスでの更なる課題とも言え,この点は材料合成からのアプローチで今後解決を図りたい.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では,電子線リソグラフィーを用いることを想定していたが,実際には加工の3次元への展開の問題やコストの問題が顕著であり,実用デバイスである燃料電池の研究においては,より現実的なアプローチで検討すべきと考えた.そこで,加工精度は下げずに同様のコンセプトを実現するために,ナノテクノロジーやナノ材料の合成に着手をしており,その点では当初の計画より検討項目が増えた分でゴールまでの検討課題はまだ多い.この修正は妥当な判断と思えるので本研究としては順調に進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
これまでの述べたように,本検討課題を推進するに当たって,真に重要な検討にするためにコスト意識も入れて全体を見直しながら,材料合成やナノテクノロジー(アッセンブリ)などの検討項目の重要度を上げた.当初の計画では,既存の技術の応用で解決できると期待していたが,実際には求める精度やコスト面での課題が多く,燃料電池などの3次元のデバイス用に新たな技術が必要であることが分かり,そこを詳細に考え検討している.具体的には新たな材料系を用いることで,これまでには不可能であった加工精度とコストの両立が図れる可能性があり,詳細に検討している.
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