形成加工性を有するII共役高分子は延伸加工技術を用いることにより、高分子鎖が一方向に揃った配向薄膜が作製可能であり、その優位性を再構築することで現在の有機デバイスの主流材料である低分子有機半導体を遥かに超える有機デバイス作製を目的とする。 平成24年度は昨年度の実験により確立した高分子配向薄膜を用いて有機デバイスの作製、評価を行った。有機トランジスタの作製として、ポリプロピレン基板(兼絶縁膜)/II共役高分子F8T2((ビチオフェン-フルオレン)ポリマー)積層膜の延伸配向薄膜を利用することを考案し、延伸ポリプロピレン側からゲート金電極を形成、延伸配向F8T2側からソース・ドレイン金電極を蒸着し、ゲート金電極/ポリプロピレン絶縁膜/F8T2配向膜/ソース・ドレイン金電極のトランジスタ構造を作製した。平成23年度の成果で挙げたように、結晶性、液晶性、アモルファス性いずれのII共役高分子でも延伸配向膜が作製出来ることを考えると、簡便な配向薄膜トランジスタの新規作製法である。しかし、ポリプロピレン基板の膜厚は152μmであり、5倍延伸後には、28μmまで薄くなるが、通常の絶縁膜(100nm以上1μm以下)と比較しても厚い絶縁膜という欠点があるが、1000V程度のゲート電圧を印加することで通常のトランジスタ動作が可能であった。 また計画通り、2年目の検討項目の有機薄膜太陽電池の研究を始めた。材料として、アモルファス薄膜を形成するトリフェニルアミン系材料(TSP-T11)、延伸配向や液晶性による配向が可能なF8T2の2種類をドナー材料として用い、可溶性C70誘導体(PC70BM)をアクセプターとして用いた。太陽電池特性を測定した結果、アモルファスのTSP-T11よりも液晶性のF8T2を用いた特性の方が高いフィルファクターが得られており、液晶性のような配向し易い材料の方が太陽電池として優れたバルクヘテロ型構造を有する薄膜が得られると考えられる。
|