研究概要 |
本年度は、電子吸引性固定基としてピリジン環を導入したD-π-A型蛍光性色素を分子設計・合成し、本色素を用いた色素増感太陽電池(DSSCs)の光電変換特性を評価した。TiO_2電極上での色素の配列・配向性がDSSCsの光電変換特性に及ぼす影響を色素吸着させたTiO_2電極の反射スペクトルおよびIR測定の結果から調べた。得られた結果を以下に示す。 1.D-π-A型蛍光性色素(1)-(6)の分子設計・合成 4,4'-ジブロモ-2-ニトロビフェニルを出発原料として、3~6段階の反応を経て、電子吸引性固定基としてピリジン環を導入したD-π-A型蛍光性色素(1)-(6)を中程度の収率で得ることが出来た。 2.溶液中およびTiO_2上に吸着させた色素の光物性 1,4-ジオキサン中での蛍光性色素(1)-(6)は370~400nmに吸収極大波長を示した。対応する蛍光スペクトルでは、色素(1)-(6)の蛍光極大波長は420~470nmに出現し、蛍光量子収率(φ)は60~85%であった。一方、TiO_2上に吸着させた色素(1)_(6)の吸収極大波長は1,4-ジオキサン中の場合と比べて10nm程度長波長シフトした。 3.TiO_2電極上での色素の配列・配向性およびDSSCsの光電変換特性の評価 TiO_2上に吸着させた蛍光性色素(1)-(6)のIRスペクトル測定から、色素(1)-(6)は色素のピリジン環とTiO_2間で配位結合を形成して吸着していることがわかった。色素(1)-(6)のDSSCsを作製し、IPCEスペクトルおよびI-V測定を行った。その結果、従来のカルボキシル基を電子吸引性固定基として有する色素と比べて、色素(1)-(6)の光電変換効率は2倍程度高い値を示した。以上より、電子吸引性固定基としてピリジン環を導入したD-π-A型蛍光性色素はDSSCs用色素として有望であることが実証された。
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