研究概要 |
本年度は、TiO_2電極との配位結合(N-Ti)による強い電子的相互作用の形成が可能なピリジン環を「電子求引性・注入性吸着基」として導入した新型D-π-A蛍光性色素NI3-NI6を分子設計・合成した。さらに、色素NI3,NI5に非共役的にカルボキシル基を導入した分離型D-π-A蛍光性色素NI7,NI8を合成した。従来型D-π-A色素NI1,NI2と比較しながら、色素NI3-NI8を用いた色素増感太陽電池(DSSC)の光電変換特性を評価した。色素NI1-NI8を用いたDSSCsのI-V測定およびIPCEスペクトル測定から光電変換特性の評価を行った。従来型NI1とNI2と比べて、新型NI3とNI4のJ_<sc>値およびη値は2倍程度高い値を示した。一方、色素NI5,NI6,NI8のJ_<sc>値とη値は、色素NI3-NI5のものよりも高い。TiO_2電極への色素吸着量に対してJ_<sc>値をプロットしたところ、従来型NI1,NI2に比べて、新型NI3とNI4の色素吸着量の増加に伴うJ_<sc>値の増加は、2倍程度大きいことがわかった。また、分離型NI7におけるJ_<sc>値の増加の程度は中程度であった。TiO_2上に吸着させた新型NI1-NI6のIRスペクトルから、従来型NI1とNI2は色素のカルボキシル基とTiO_2のブレンスレッド酸サイト間でエステル結合を形成して吸着しているが、新型NI3-NI6は色素のピリジン環の窒素(N)とTiO_2のルイス酸サイト間で配位結合を形成して吸着していることがわかった。また、分離型NI7,NI8は、エステル結合と配位結合の両方で吸着していた。さらに、TiO_2表面をBF_3処理したTiO_2電極を用いることで、新型D-π-A色素のJ_<sc>値を2倍程度増大させることに成功した。本研究から、ピリジン環は「電子吸引性・注入性吸着基」として有望であることが実証された。
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