研究概要 |
本研究では、「酸素貯蔵材料」の新規物質開発とその応用展開を目的とした。酸化還元反応の精密制御を可能にする酸素貯蔵材料に関しては、現在CZ(セリア・ジルコニア固溶体)が自動車排ガスの燃焼触媒として広く実用化されている。酸化還元触媒、酸素濃縮、燃料電池の電極材料など様々な酸素関連分野への応用を実現するには、優れた酸素貯蔵能を持つ新規材料の開発が強く望まれる。本研究ではマンガンなど遷移金属の酸化物に着目し、顕著な酸素吸収放出特性を示す材料の開発研究を行った。さらには、得られた新規酸素貯蔵材料の新しい酸素関連分野への応用展開を検討した。以下に主な研究成果を示す。 ・我々が独自に開発したマンガン系酸素貯蔵材料BaYMn_2O_<5+δ>について、ガス雰囲気変化時の酸素吸収放出挙動とそれに伴う結晶構造変化を調べ、酸素吸収放出メカニズムを検討した。粉末試料の熱重量分析およびX線回折分析の結果、本物質は酸素吸収放出過程において酸素量が連続的に変化するのではなく、酸素量の異なる3つの相(δ=0,0.5,1)にそう分離し、各相の割合が変化することにより見かけ上の酸素量が増減することを明らかにした。 ・我々が独自に開発した酸素貯蔵材料Ca_2AIMnO_<5+δ>の酸素濃縮応用を検討した。Ca_2AIMnO_<5+δ>の酸素吸収放出挙動を利用して、温度スイングのみで大気からの酸素濃縮を達成した。本物質は温度幅200℃の小さなスイングで顕著な酸素吸収放出を示すため、高い効率で酸素濃縮を行うことができた。装置自体の効率は97%に達した。
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