研究課題
ナノ~マイクロサイズの異相構造を自己組織的に発現させた結晶化ガラスは、薄膜材料、あるいはゲスト・ホスト型の複合材料とは一線を画する、新規バルクガラス材料である。本研究は、酸化物半導体ナノ結晶と金属のナノ結晶を共析出した結晶化ガラスを種々の方法を用いて創製し、その物性を評価することにより、新規機能性結晶化ガラスとして発信することを研究目的とする。初年度は、ガラス中における金属と酸化物結晶の共析出のために、金属を析出する作製条件検討をおこなった。通常、ガラス中に析出する金属は、還元剤を用いて、出発原料である酸化物を還元させ生成させる。そのため、本年度は、従来の金、銅などの11属元素を含む種々の金属酸化物を含有するガラスを作製し、還元剤と析出可能な元素についての検討をおこなった。その結果、典型金属元素であるビスマス、アンチモンを金属としてガラス中に析出させる手法として、窒化物やアンモニウム塩の添加が非常に有用であることを見出した。しかしながら、これらの金属が析出した酸化物ガラスの中には、肉眼において検出可能な試料も存在し、透明性と金属微結晶析出を両立できうる手法の確立には至らなかった。そのため、今後、溶融温度・還元剤・酸化物ガラス系に関するデータを広範囲で収集し金属ナノ結晶を析出可能な手法の確立をおこなう予定である。一方で、ナノ金属が析出したガラスは、析出していないガラス系に比べてより低温での熱処理により結晶化が達成されることを見出した。金属結晶と酸化物ガラスの界面を利用した構造形成は、酸化物ガラスにおける結晶化挙動の制御の鍵となる重要な知見であると考えられる。
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Journal of Applied Physics
巻: 108 ページ: 023503/1-023503/4