ナノ~マイクロサイズの異相構造を自己組織的に発現させた結晶化ガラスは、ナノサイズの微粒子が均一に分散した材料であり、従来のゲストホスト型バルク体材料とは一線を画する無機材料である。ガラスにおける熱力学的転移は一般的に過冷却液体からの結晶化であるが、過冷却液体中における酸化還元状態を制御することにより、金属と誘電体という異なる誘電特性を有するナノ結晶が析出した材料が作製可能になる。本研究は、酸化物ナノ結晶と金属ナノ結晶を共析出した結晶化ガラスを種々の方法を用いて創製し、その物性を評価することにより、新規機能性結晶化ガラスとして発信することを研究目的とする。 平成24年度は、溶融急冷法により作製した酸化物ガラスにおけるナノ粒子形成を検討した。リン酸アンモニウムを出発原料とするリン酸塩ガラスにおいて、高い非線形光学定数を持つTeナノ粒子の析出に成功した。これは、原料中に含有される還元種と原料であるTeO2とのredox反応によるものである。得られたTe析出ガラス、および、昨年度得られたPt析出ガラスを熱処理することにより、金属ナノ結晶と酸化物結晶が共析出した結晶化ガラスの作製に成功したが、透明性と選択的結晶化に課題があり、光学応用を検討する場合はより精密な結晶化プロセスの制御が必要であることが判った。特に、試料最表面近傍は通常の熱処理過程と同様、アモルファス相になっていると考えられ、この領域における制御を今後行う必要がある。将来的には、シミュレーションや分子理論計算などを用いて、ガラス中における酸化物結晶の核生成サイトおよび機能性中心としての金属ナノ粒子の更なる制御が必要である。
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