研究概要 |
シリカガラスは広い透明領域、高い強度と化学的耐久性を併せ持つ優れた光学材料であり、希土類イオンなどの発光中心をドープすることで、ファイバーレーザーなどの機能性発光材料が実現されている。しかし、シリカガラスは希土類イオンを溶解しにくく、それらの凝集が起こりやすいため、希土類イオンの高濃度ドープによる小型化・高性能化は困難である。本研究者らは最近、液相合成法の一種であるゾル-ゲル法によって試薬使用量の削減と合成時間の短縮が可能であることを示してきた。この手法を発展させ、希土類イオンが高濃度均一分散したシリカガラスの合成、発光強度を減少させる大きな原因となるSiOH基の低減、フッ化物との複合材料であるフッ化物ナノ結晶ドープシリカガラスの合成、などに取り組んだ。リンは、希土類イオンを溶媒和し、そのシリカガラスへの溶解を促すことが知られていたが、前駆体溶液中で希土類イオンと反応して沈澱を生じることが多く、希土類-リン共ドープシリカガラスの液相合成例はこれまでなかった。今回、POH基を含まない化合物をリン源とすることで沈澱生成を抑制し、希土類イオンをSiに対して2at.%と高濃度に含むシリカガラスの液相合成に成功した。緑色の発光を示すTb^<3+>イオンドープガラスでは、Tb^<3+>イオン濃度に比例して発光強度が増大したことから、濃度消光の影響は小さく、希土類イオンが均一分散していることが示唆された。あわせて、この手法はNd^<3+>, Ho^<3+>, Er^<3+>Eu^<3+>イオンなど、他の希土類イオンを含むシリカガラスの作製に一般化できることを示した。また、液相フッ素ドープによって、気相合成法によるシリカガラスにほぼ匹敵する低SiOH基濃度のフッ素ドープシリカガラスが得られること、従来の手法に比べて大幅に短い時間でアップコンバージョン蛍光体であるEr^<3+>ドープLaF_3ナノ結晶ドープシリカガラスが合成できることを示した。
|