研究概要 |
高分子薄膜へのイオンビーム特に単一のイオン照射は、単一イオンの飛跡に沿ったイオントラック内での架橋反応を引き起こし、円柱状のナノ構造体(ナノワイヤー)を形成する。この単一イオン照射法は、架橋反応を引き起こすならば、どのような高分子材料にも適用することができる高い汎用性を持つ。本研究課題においては、外界の変化(温度、pH、光など)に対して可逆的にゲルの体積を変化させる刺激応答性の高分子を照射対象とし、刺激応答性高分子薄膜への単一イオン照射を行うことにより、1)外部場応答性ナノワイヤーの形成,2)精密なサイズ制御による体積変化の制御,3)多ブロック化の展開を含めた新機能創成をそれぞれ達成し、薬学、医学分野への有用な材料として応用を図る。平成22年度においては、上記手法が適用可能な高分子材料を探索することを目的とし、刺激応答性の高分子材料でのナノ構造化を試みた。選択した高分子は、水溶性高分子のポリビニルピロリドン、温度応答性高分子のポリイソプロピルアクリルアミド、pH応答性のポリアクリル酸である。これらの高分子は高い膨潤性を有するために従来の方法では、現像と呼ばれる分離過程で分解してしまい、ナノ構造化には至らなかった。そこでナノ構造体を強化するために照射前の薄膜に架橋剤を添加し、架橋反応の効率化を図った。その結果、架橋剤を加えることにより上記3種の高分子において、安定なナノワイヤーの形成に成功した。
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