高分子薄膜へのイオンビーム特に単一のイオン照射は、単一イオンの飛跡に沿ったイオントラック内での架橋反応を引き起こし、円柱状のナノ構造体(ナノワイヤー)を形成する。上記、高エネルギーイオンビームを使用した高分子1次元ナノ構造体作製技術、「単一粒子ナノ加工法」を基盤とし、前年度までに、外界の変化に対して可逆的にゲルの体積を変化させる刺激応答性の高分子を照射対象とし、刺激応答性高分子ナノワイヤーの形成とそのサイズ制御に成功している。また、形成されたナノワイヤー中の架橋網目構造がナノワイヤーの膨潤率と相関することが判明している。平成24年度においては、ナノワイヤーの膨潤挙動を制御するために、導入される架橋点の密度を架橋剤の添加量、及びイオンビーム照射後に電子線を照射する2つの手法を提案し研究を行った。上記手法により作製したナノワイヤーの体積変化を原子力顕微鏡により定量評価することにより、ナノワイヤー中に導入される架橋点を架橋剤の量と電子線の照射量により制御することに成功した。また、刺激応答性高分子を含む2~3種類の異なる高分子を積層した高分子多層膜への単一粒子ナノ加工法の適用により、各高分子ブロックから構成された多ブロックナノ構造体の形成に成功した。高分子多層膜の作製時の積層順の選択により、任意の箇所に刺激性ブロックを挿入できることも実証し、高分子、積層順の組み合わせにより多様な機能を持つナノブロックシステムが設計できることが提案された。
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