塩酸加水分解により調製した棒状セルロース微結晶(セルロースウィスカー)の表面にポリエチレングリコールの片末端をグラフトし、立体安定化されたコロイド懸濁液を調製する新たな手法を開発した。 具体的には、まず綿由来セルロース(Whatman CF11)の2.5M塩酸加水分解によって調製したウィスカーの水分散懸濁液に対して溶媒置換を行い、DMAc、DMSOなどの非プロトン系有機溶媒へウィスカーが分散した懸濁液を調製した。一方で分子量1000のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(nPEG)の片末端をカルボキシル化してカルボキシル化mPEG (mPEG-COOH)を調製した。得られたmPEG-COOHの末端カルボキシル基をカルボニルジイミダゾール(CDI)で活性化したのちに、セルロースウィスカー表面の水酸基とエステル結合した。得られた試料には、ウィスカー1gあたりmPEGが約0.5gグラフトしていることが、重量増加測定・アルカリ加水分解後に回収したウィスカー重量測定などから明らかになった。また、系に電解質(0.1M NaCl)が共存しても分散して流動複屈折を示すなど、出発物質のセルロースウィスカーに比べて分散安定性が大きく向上した。 本研究の結果は、表面電荷の存在しないセルロースコロイド粒子を立体安定化によって分散させ安定にした初めての例であり、同時に次年度の計画をさらに進めるための基礎的知見を得ることができた。
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