研究概要 |
ゲノム創薬やテーラーメイド医療を現実にするためには、「タンパク質の核形成をどのように促進させるか」という困難な問題を解決しなければならず、このような問題を解決することのできる新しい結晶育成技術の開発が望まれている。 これまで我々は、卵白リゾチームを用いて、交流電場印加が卵白リゾチーム結晶の核形成速度に与える影響を明らかにし(H. Koizumi et al., Cryst. Growth & Des.(2009).)、さらに、核形成速度への電場印加の効果が、界面において形成されている電気二重層の厚さを操作することにより制御(H. Koizumi et al., Langmuir(2011).)できることを示してきた。 しかしながら、これまでの実験で用いてきた卵白リゾチームというタンパク質は、比較的核形成が起こりやすいタンパク質であるため、核形成が起こりにくいタンパク質を用いて、本研究課題で確立してきた育成技術が適応できるか確かめなければならない。そこで、本研究は、インシュリンという核形成が困難なタンパク質を用いて、交流電場印加による本結晶育成技術が応用可能かどうか調べることを目的とした。 結果として、インシュリンを用いた場合においても交流電場印加による核形成速度の制御は可能であることが示された。さらに、インシュリンにおいても電場印加の効果を生じさせるためには、界面において形成されている電気二重層が重要な役割を果たしていると示唆されたため、その電気二重層の厚さを操作することにより電場印加効果の制御が可能であることが期待される。以上のように、本研究で確立した育成技術は様々なタンパク質に応用が期待でき、タンパク質結晶の核形成問題のブレークスルーとして期待できる。
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