研究課題/領域番号 |
22760002
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
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キーワード | 金属ガラス / 磁性 / L10-FePt / 薄膜 |
研究概要 |
2011年度前半はマグネトロン同時スパッタリング法によりMgO(100)表面に400~600℃までの異なる温度でエピタキシャル成長させ複数の種類のL10FePt薄膜を作製した。(002)もしくは(002)と(200)面の混合結晶構造となるように作製条件を最適化した。(200)と(002)の2つの異なる結晶面方位のL10FePtの磁気特性についても調査を行った。Fe71Nb4Hf3Y2B20ガラス相の薄膜を蒸着させその構造および磁気特性について研究を行った。DSC測定の結果Tg、TxおよびΔTxはそれぞれ858 K(585℃),921 K(648℃)and 63 Kであった。FeNbHfYB薄膜のナノプリンティングにも挑戦し成功したが、型と薄膜が拡散してしまうといった問題に直面した。FeNbHfYB薄膜は740 emu/cm3もの高い飽和磁化をもつ軟磁性特性を示し、下地層のCoFeTaB(287 emu/cm3)よりも大きい値であった。 2011年度後半はL10FePt/Fe71Nb4Hf3Y2B20ガラス/SiO2/Siをマグネトロンスパッタリングで蒸着した。Fe71Nb4Hf3Y2B20ガラス相へのL10FePtは(111)面に優先的に成長し、厚み10nmの下地層により優先成長を促進させることが出来た。ガラス相の下地上に蒸着したL10FePtの容易磁化方向は試料面の外方向に36°でありこの分布は円錐状であった。磁気記録媒体として使用される際に重要となる保磁力は10nm以下になるまではほとんど変化することが無かった。10nmのFePtは下地のガラス相の厚みに依存する。L10FePt/Fe71Nb4Hf3Y2B20ガラス/SiO2/Siの2層構造の磁化反転メカニズムについて理解することが可能であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究計画の二年目は従来のCoFeTaB層と比較して3倍の飽和磁化を有するFeHfNbYB金属ガラス層を新たなアンダーレイヤー組成として見出した。またこれによりFePtのL10構造の(111)方向へ優先成長を促進させることに成功した。これらの結果は学術論文としてすでに投稿した。
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今後の研究の推進方策 |
またFeHfNbYB金属ガラス合金が非常に広い過冷却液体領域を発現することにも着目し、ナノプリンティングの初期実験においてはマイクロメートルオーダーの磁気ビットをパターンニングすることが可能であった。しかしながら、インプリントを行った薄膜とダイが焼きついてしまうという問題に直面した。そこで異なる材質のダイを用いてインプリントを試みる予定にしている。また、代わりの方法として電子線リソグラフィーによりL10FePt/FeHfNbYBの二層構造の磁気ビットを作製する方法も調査する予定にしている。高密度磁気記録媒体を実現するためにビットの磁気特性評価および構造評価を行う予定にしている。
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